美容製品と炭素:美容業界が地球温暖化問題に取り組む方法
気候変動がもたらす壊滅的な影響を抑制するために行動を起こさねばいけないこと、炭素の排出が私たちの地球に大きな影響を与え、取り返しのつかないことになる可能性があることは周知の事実とされています。二酸化炭素は大気中で最も顕著な温室効果ガスであり(1)、その量は驚異的で、私たちが対処できないほど大きな影響を環境に与えています。
二酸化炭素そのものは悪いものではありません。むしろ、私たちは生きていくためには二酸化炭素は必要です。二酸化炭素がなければ、植物は生存できません。そして植物は酸素を生産できず私たちも生きてはいけません。また、二酸化炭素がなければ地球は人類が住めるほど暖かくはならないでしょう。
しかしながら、大気中の二酸化炭素濃度の劇的な上昇は良くありません。化石燃料の燃焼により、現在の大気中の二酸化炭素濃度は約100万年の中で史上最高を示しています。(2)これにより、地球上の熱を必要以上に閉じ込めてしまい温度を上昇させ、地球の気候制御システムに大きな衝撃を与えています。
地球温暖化という恐ろしい真実を無視することはもうできません。近年、私たちは世界中で気候変動がもたらす悪影響を体験しています。異常気象は、40年前に比べて5倍も増加しており(3)、今すぐ対策をしなければ、さらに増加することが予想されます。ハリケーン「フィオナ」と「イアン」はともに、2022年9月にわずか数日違いで米国フロリダ州とプエルトリコに壊滅的な被害をもたらしました。科学者は、気候が温暖化するにつれて、こうした暴風雨がより頻繁に起こるようになると警告しています。ハリケーンは、「海面温度が上昇するにつれて、より強力になっていいます。なぜなら、その原動力は温暖化した海水からエネルギーからきているから」です(4)。

ハリケーン「デルタ」は、米国ルイジアナ州のメキシコ湾に被害をもたらしました。
人間の活動は、産業革命以前より約1.1℃の温暖化をもたらしたと推定されています。温度の数字自体は大したことはないと思われるかもしれませんが、エネルギーに換算すると途方もない数字となります。このまま温暖化が進むと、2030年から2052年の間に1.5℃に達する可能性があると言われています。
気候変動は、将来に向けて将来取り組んでいくもの、ではもはやありません。気候変動の有害な影響はすでに私たちの手元に到来しています。1.1℃の温暖化がすでに進んでいるという事実は、人類が先手を打ち、地球を愛し、守り、未来に受け継いでゆくために対策を取り組む必要があることを証明しているのです。 幸いにも、まだ手遅れではありません。ただし、その必要性は今まさに迫ってきているのです。
クローダはビジネスとして、2030年までに気候変動の対策が実行可能な企業になることを約束しています。これが意味しているのは、炭素の排出量の削減と事業活動における再生可能エネルギーの最大限の活用、化石原料や石油化学原料に頼らないバイオベース製品への移行、低炭素経済への移行、使用とともに二酸化炭素削減に貢献できる製品の開発などです。
「Purposeful Beauty™ - What’s Your Purpose」の最新エピソードでは、社内のカーボンエキスパートであるGroup Sustainability DirectorのJulia CreasyとProject ManagerのGrant Mitchellが、ビューティー&パーソナルケア業界、そしてより広い化学業界全体の二酸化炭素排出量を減らすために取るべき行動をいくつか論じました。
こちらのポッドキャストにて、全ての対談を聞くことができます(英語): https://open.spotify.com/episode
化学業界は、気候変動や地球温暖化にどのように対処すればよいのでしょうか?
温室効果ガス(GHG)排出量のうち、炭素排出量が最も大きな割合を占めることから、炭素排出のスコープ1、2、3の抑制がさらなる地球温暖化と気候変動に対処するための重要な行動であると言えます。
参考文献:
スコープ1とは、燃料を燃やすことによって発生する直接排出を指します。化学業界の企業であれば、製造現場で天然ガスを燃やすことで発生する排出、消費者であれば、家庭でボイラーを使用することで発生する排出などがこれに該当します。
スコープ2とは、個人や企業が消費する電力が生産される際に発生する間接的な排出です。これらの排出を生み出す原因となるエネルギーは、各自の直接的な排出ではなく、組織または個人が所有(購入)または管理しているエネルギーの使用を通じて発生します。
スコープ3とは、上記以外のすべての排出を意味します。化学分野では、生産拠点に到達するまでの原材料の調達、生産、輸送(上流)、さらにメーカー拠点から出荷する際の製品の輸送(下流)など、サプライチェーンに関するあらゆる要素も含まれます。さらに、スコープ3では、顧客や最終消費者が使用する原料や製品に関する排出まで遡ります。
企業としてやるべきことはまだまだ山積みです。現在、私たちはまだエネルギーを使用したプロセスに依存していますが、事業全体で様々な対策を採用し進歩を遂げることが可能です。たとえば製造業では、より効率的な代替プロセスを採用したり、まったく新しい製造方法を導入したりすることで、エネルギー使用量を最小限に留めることができます。一般的な取り組みとしては、社用車をハイブリッド車や電気自動車への切り替えることや、物流や輸送、配送などにおける影響の調査を行なうことが挙げられます。スコープ3については、サプライチェーンに排出量削減の目標を設定するよう促すことで、全体的な影響度を下げることができます。
クローダはどのように炭素排出軽減に取り組んでいますか?
クローダは、他の多くの化学分野のサプライヤーや企業とともに、Science Based Targets(SBTs)を設定しています。SBTsとは、世界の気温上昇が1.5℃になることを抑えるために何をすべきかを科学的根拠に基づいて示した排出削減目標です。この目標は、企業が「温室効果ガス(GHG)排出を削減し、気候変動の最悪の影響を防ぐとともに将来の事業成長を支える」ための道筋と言えます。(5)
SBTsの活用により、私たちは炭素予算(大気中に排出し続けても気温上昇の影響を1.5度以下に維持できる炭素排出量)を算出し、目標とする削減指標を達成するための計画を企業または個人レベルで策定することに取り組んでいます。
クローダでは、科学的根拠に基づく目標を設定し、スコープ1と2の排出量を大幅に削減する必要性を重視していますが、最大の目標はサプライチェーンと連携し、排出量の大部分を占めるスコープ3の排出量に取り組むことです。
2018年を基準として、2030年までにスコープ1と2の事業所排出量を46.2%、スコープ3の上流部門排出量を13.5%削減することを目標にしています。その結果、2030年までに製品の平均二酸化炭素排出量を35%削減することを目標としています。
美容業界における炭素削減の取り組み、その役割とは?
他のサプライヤーや組織と共に取り組んでも、クローダだけの活動では脱炭素の変化をもたらすことはできません。ポジティブかつ持続可能な影響を与えるためには、美容業界全体で透明性を保ち、協力し合う必要があります。
原材料のサプライヤーから、製造、各ブランド、そして消費者すべてが、地球への影響を軽くする方法を見つけるために協力する必要があります。排出量はサプライチェーンの影響を受けるので、互いに考慮し、協力することなしに、目標の達成は実現できません。
例えば、パーソナルケアの最終点(製品のメーカー)の場合、排出量の95%はスコープ3(6)であり、化粧品のメーカーが排出量削減目標を達成するためには、サプライヤーや上流のすべての人に協力を求める必要があります。また、消費者についても同じことが言えます。しかし、消費者は、製品を購入する際に企業が気候変動の対策のために取っている措置について正確で信頼できるデータがなければ、信頼して購入することはできません。
ブランドやメーカーは消費者に対して、二酸化炭素排出量を削減するような製品の使い方を提案する役割を担えるのではないでしょうか? ポッドキャストの中でGrantが述べているように、シャンプーが及ぼす環境変化への歴史を振り返ると、その大部分がシャワーのお湯を沸かすのに使われています。シャワーを浴びる時間の長さが二酸化炭素排出量にどのような影響を与えるかについて理解し認識することで、消費者が自分自身でできる対策を十分な情報を得た上で決断することができるのです。
生産者側は、原材料を変えることで排出量を大幅に削減することができます。植物が成長する過程で二酸化炭素を吸収し、収穫時にのみ放出するバイオベースの原材料を使用することはその良い例です。バイオベースの原材料を使用することで、自然のプロセスが排出される二酸化炭素を相殺し、全体的な二酸化炭素排出量を削減することができるのです。さらに、代替植物油や持続性のないパーム油の代わりに、持続可能な認証を受けたパーム油に切り替えることで、森林破壊、生態系の損出、温室効果ガス排出を減らすことができます。(7)
環境への影響を最小化するために考慮すべきことは、他にもたくさんあります。例えば、製品を製造するために、土地やエネルギーの使用量を削減するバイオテクノロジーのソリューションを使用すれば、それらに関連する排出量も少なくすることができます。また、常温下での製造なども挙げられます。この場合、製品中の成分を加熱する必要がないため、最終製品の製造に使用されるエネルギーの削減につながります。
クローダのビューティケア事業では、製品の製造や原料調達に関わる排出量の削減を通じて、お客様の製品購入を通じて上流工程におけるスコープ3排出量の削減をサポートすることを目的としています。また、排出量の削減を念頭に置いて開発されたクローダの新しい成分(例えば、100%再生可能で100%バイオベースノニオン界面活性剤シリーズ ECO Range)を取り入れることにより、製品の使用に伴う二酸化炭素排出量の削減を支援し、下流のスコープ3排出量の削減の協力をすることを目指します。私たちは、製品開発プロセスにおいてサステナビリティと環境に配慮しています。私たちの成分の提供がお客様のサステナビリティ目標の達成に役立ち、気候変動対策において業界を前進させることができると知っているからです。クローダ製品を使用することで、最終的にはあらゆる分野のお客様が毎年400万トンの炭素の使用の削減を実現します。(8)
炭素削減の次のステップとは?
炭素の使用と排出を完全に止めることは不可能ですが、排出された炭素が再吸収されれば、環境に与える直接の影響はほぼなくなります。排出される炭素の量と再吸収される炭素の量が等しくなることを「ネット・ゼロ」と呼ぶのもこの循環が由来です。化学業界にとって、ネットゼロに近づくという目標は大きな変化であり、私たちの役割やサプライチェーン全体にとってそれらの意味を理解するには、まだまだ長い道のりとなるでしょう。
ジュリアがこれらについて言及しています:
クローダ サステナビリティレポート 2021

次世代の炭素削減とは?
美容製品と炭素
炭素削減以外でもできる、サステナブルな取り組みとは?
クローダは、2030年までに気候、土地、人々に優しくあることをコミットメントとして掲げています。これは、自然資本が保護・回復され、すべての人々の本質的な健康、福祉、繁栄を支える未来を実現するための取り組みを意味しています。クローダのNet Nature Positiveの目標は、サプライチェーンにおける自然生態系の保全と回復に一層力を注ぎ、事業活動による水汚染の影響を最小限に抑え、持続可能で再生可能な農業の支援を加速することで達成されると信じています。
気候の問題、土地の問題、人類の問題を考えることは、常にトレードオフの関係にあることを知ることが重要です。ある分野では有益でも、別の分野ではプラスにならないことがあるのです。ライフサイクルアセスメント(製品のライフサイクルの全段階に関わる環境影響を評価する手法で、炭素排出への影響だけでなく、大気、土地、水への影響を包括的に考慮する評価方法)は、製品が与える影響の全体を、より包括的に把握するために役立ちます。
やるべきことはまだ山積みで、その重要性や緊急性にも注目するべきであることは認識しています。サステナビリティに関連した変化や改善にはかなりの投資が必要ですが、私たちの健康や地球の健康を考慮すれば、将来的にコストを削減へとつながります。
アイディアや解決策は揃っています。私たちは今こそパーソナルケア産業として協力し、互いに助け合う必要があります。そこにはリスクも存在しますが、実際に行動に移すことで障壁を乗り越え、革新的で、私たち全員に利益をもたらす低炭素型の製品や製造方法に移行できる多くの機会も生まれていくのです。
Sources:
(1) https://www.greenmatters.com/p/how-do-carbon-emissions-affect-environment
(2) https://climate.nasa.gov/evidence/
(3) NatcatSERVICE Munich RE 2021
(4) https://earthjustice.org/features/how-climate-change-is-fueling-extreme-weather
(5) https://sciencebasedtargets.org/how-it-works
(6) Source Trucost. State of Green Business Report 2020 © 2020 GreenBiz Group Inc. (www.greenbiz.com).
(7) https://www.wwf.org.uk/updates/8-things-know-about-palm-oil
(8) Croda Sustainability Report: https://www.croda.com/en-gb/sustainability/non-financial-performance-and-reports/sustainability-report/sustainability-report-archive
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