日焼け止めとUVフィルターに関する神話 ～クリーンな日焼け止めとサンゴの保護～

環境への影響にまつわる12の都市伝説

「天然＝安全」だからミネラル/無機UVフィルターがよい？

成分の由来がその安全性を保証することはありません。天然成分でも有害である場合はあります。この言い伝えは、特に日焼け止めの分野で、SNS上でよく見かける化学物質恐怖症が元になっていると考えられます。ミネラル・無機UVフィルターは、安全性と自然性の両方の条件を満たしており、アメリカでは唯一GRASEカテゴリー１に分類されています。1　副作用やアレルギー性を示すことなく、長きにわたって安全に使用されてきました。2　クローダのサンケア製品はCOSMOS認証を受けています。

TiO2 や ZnOは自然界に存在しない？

多くの場合、酸化チタンや酸化亜鉛は天然であるとされますが、時折、天然ではないという俗説を見かけることがあります。これは消費者を非常に混乱させてしまいます。
酸化チタンと酸化亜鉛は天然物と同一の鉱物です（ISOはこれを「地球上に自然に存在する無機物を化学的に処理して得られた、天然鉱物成分と同じ化学組成を持つもの」と定義しています）。
チタンは地球上で9番目に多く存在する元素で、鉱石の形で産出されます。酸化チタンはチタンで最も一般的な化合物です。チタンは、水、岩石、土壌だけでなく、ほとんどすべての生物に含まれています。UVフィルターとしての酸化チタンは、地球から採掘されたチタン化合物を、海水の廃液を利用した水系プロセスで変換することで得られます。
酸化亜鉛は希少な鉱物ですが、使用されてきた歴史は古く、紀元前500年頃には薬用軟膏として利用されていたと考えられています。天然にはジンサイトという鉱物がありますが、市販の酸化亜鉛はすべて金属亜鉛を高温で蒸発させることで合成されています。

TiO2 と ZnO の製造工程と環境へのインパクトはニュートラルではない？

酸化チタンと酸化亜鉛の生産における環境負荷の測定はCroda にとって優先事項であり、原材料の仕入れ先と協力して製品の完全なライフサイクル分析に取り組んでいます。Croda は持続可能性へのコミットメントとして、2030年までに気候、土地、人々に対する影響をプラスにすることを目指します。スペインのジローナとイギリスのディトンにある当社のサンスクリーン製造拠点では、100％再生可能な電力を使用しています。製造に伴う二酸化炭素排出量は、2030年までに半減させる予定です。持続可能性の目標については、こちらをご覧ください。

TiO2 や ZnO は生分解性がないので、環境に有害？

生分解性とは、環境に害を与えることなく自然に分解されることを意味します。生分解性は有機炭素が生態系内でどれだけ速く分解されるかを示す指標であり、有機炭素がない場合（例えば酸化チタンや酸化亜鉛のような鉱物）、その測定は意味を持ちません。つまり、酸化チタンや酸化亜鉛は不活性な鉱物であり、すでに自然の中に存在しているため、生分解される必要はないのです。

ミネラル/無機化合物は不安定、光触媒物質だから、化学的な処理や表面処理が必要？

基本的に酸化チタンは光触媒物質であり、これがセルフクリーニングガラスのような用途に有用な理由です。しかし化粧品用途においては、消費者安全科学委員会（SCCS）の基準に則り安全に使用できるように、すべての酸化チタンがコーティングまたはドーピングされています（参照３）。酸化亜鉛は光触媒でなく、コーティングなしで使用可能ですが、コーティングによって処方への配合が容易になり、他の配合成分との相性も改善されます。Croda は、コーティングの酸化チタン製品、および非コーティングの酸化亜鉛とコーティング酸化亜鉛の両方のグレードを提供しています。当社製品の詳細、当社製品で実現可能なSPFを確認するには、Solaveil Calulator をお試しください。

日焼け止めに含まれるアルミナが癌の原因になる？

この俗説は、アルミニウム塩が乳癌やアルツハイマー病の発症に関与しているという主張が元になっています。しかし、EUの消費者安全科学委員会（SCCS）によると、一定のレベルまでは安全であると承認されています。また、酸化チタンのコーティングに使用されているアルミニウムは、問題となる可溶性アルミニウム塩とは化学的に異なるものです。アルミニウムベースのコーティング（酸化アルミニウム＝アルミナ）およびステアリン酸アルミニウム）は、可溶性アルミニウム種を生じない不溶性化合物で、表面に化学結合しています。また、コーティング剤としてSCCSの認定も受けています。

シリカコーティングのTiO2は有害？

この俗説は、シリカの種類に関する混乱から生じています。EUでは化粧品におけるシリカ（ナノ）と水和シリカ（ナノ）の使用を禁止する法律案があります。しかし、シリカコート酸化チタンは、シリカがコア酸化チタンに析出し、粒子表面に化学結合しているため、影響を受けません。また、シリカはコーティングとしてSCCSの承認を受けています。

ミネラル・無機UVフィルターは”ケミカルフリー”？

すべてのものは化学成分から成っているため、「ケミカルフリー」と言うと製品に誤った印象を与えてしまいます。なぜ「ケミカルフリー」という文言が多用されているのかについては、2つの重要な定義が関わっています。

• 有機UVフィルターは、ケミカルフィルターとも呼ばれている。

• 無機UVフィルターは、物理的・ミネラルフィルターとして知られている。

一部のブランドでは、日焼け止めがオーガニックでありケミカルフィルターをベースにしていないことを示すために、「ケミカルフリー」と謳うことがありますが、すべてのUVフィルターは基本的に化学物質です。しかし、無機／ミネラルフィルターは自然界に存在する物質と同じ鉱物であるため、ナチュラルでクリーンな日焼け止めブランドから好まれています。

日焼け止めはサンゴ白化の主な原因になっている？

これは日焼け止めに関する最大の神話の1つで、メディアによって広く拡散されています。実際には、日焼け止めが自然にサンゴの白化を引き起こすという直接的な証拠は存在しません。4 　これと同様の結論が、有機 UV フィルターの露出の危険性とサンゴへのリスクに関する最近の重要なレビューでも導き出されました。5

この業界では、この間違った認識によってサンゴ白化の本当の原因である気候変動から人々が目をそらし、日焼け止め製品のメリットを軽視してしまうのではないかと懸念しています。

しかし、ハワイ州ではオキシベンゾン（ベンゾフェノン-3）とオクチノキサート（メトキシ桂皮酸エチルヘキシル）が禁止されています。また、アボベンゾン（ブチルメトキシジベンゾイルメタン）とオクトクリレンを禁止する法案も進行中です。このため、市場は有機UVフィルターから、当局の禁止されていない無機UVフィルターへと移行しつつあります。

日焼止めに含まれるTiO2が海中で過酸化水素を生成する？？

この俗説は、日焼け止めが沿岸水域の過酸化水素（H₂O₂）の発生源であると結論づけたある研究に由来しています。この研究結果は専門家によって否定されており、酸化チタンUVフィルターは不溶性であり、沿岸水域に見られる金属の発生源であるという証拠はないと指摘してされています。さらに、過酸化水素は海中に自然に存在するものであり、この研究内で指摘している数値は通常の範囲内に収まっています。

ZnOは佐水毒性があり、サンゴに有害？？

確かに、酸化亜鉛は水生生物に対して非常に毒性が強く、長期的な影響があるハザードとして認識されています。しかし、ハザードとリスクは同義ではなく、海洋環境での曝露を考慮に入れる必要があります。現在入手可能なデータに基づけば、日焼け止めに酸化亜鉛を使用することによる亜鉛曝露は、水生環境へのリスクとはならないと結論付けることができます。6　ミンテルGNPD（世界新商品情報データベース）によれば、酸化亜鉛は依然として、サンゴへの安全性をうたった製品に最も広く使用されているUVフィルターです。

TiO2 や ZnO には生物濃縮性がある？？

環境負荷とクリーンな日焼け止めに関連する俗説です。実際には無機UVフィルターには生物濃縮性がないことが分かっています。欧州化学品庁（ECHA）によると、無脊椎動物や魚類におけるナノサイズ酸化チタンの生物濃縮に関するデータは生物濃縮や生物凝集がないことを示唆しています。酸化亜鉛については、ECHAは亜鉛が生物によって活発に制御される必須元素であるため、無機亜鉛物質については生物濃縮/生物蓄積は関連性がないだろうと述べています。

次回のブログでは、日焼け止めの健康効果や消費者の間の俗説について取り上げる予定です。もし「これが本当なのか教えて欲しい」という俗説があれば、ぜひお問い合わせください。